サンボとは

写真提供:寺田典子

サンボの起源

1920年代、ロシアにおける軍隊と警官の訓練を目的とし、自己防衛のための特別な格闘技として誕生したのがサンボです。サンボは異なるスポーツ競技から集まった人々によって生み出されました。彼らはサンボを形成するにあたり、各国の格闘技における寝技(押さえ込みや関節技)に着目しました。ウズベキスタンの『クラッシュ』、グルジアの『チダオバ』、アルメニアの『コチ』、ロシアの『拳闘』など旧ソビエト連邦の格闘技をはじめ、日本の『柔術』、モンゴルの『ブフ』、中国の『シュアイジャオ』、さらに『フランス式レスリング』や『モンゴル相撲』がサンボの形成に大きな影響を与えました。 1923年、新たな武道の一つとして、サンボ部門がロシアのディナモ(旧秘密警察のスポーツクラブ)に設けられました。そして1938年11月16日、サンボは武器を使わない自己防衛術として公に認められます。前述の起源から分かるとおり、サンボには初期の段階から、痛みを伴う高度な関節技や立ち技と寝技におけるコンビネーション、さらには優れた戦略が存在していたのです。 サンボの利点は、サンボが形成されてから最初の年にすでに証明されています。事実、サンボの格闘家たちはどんな格闘技の試合でも勝利を収めました。現在でもサンボは、完全無欠の格闘技として、ダイナミックに発展し続けています。

サンボの創始者

サンボの創始者と考えられている人物は、ビクトル・スピリドノフ、ワシリー・オシェプコフ、アナトリー・ハルラムピエフの3名です。 ビクトル・スピリドノフはロシアの陸軍将校で、1923年に独自の自己防衛術を編み出しました。この防衛術の名称は、のちにサンボという公式な競技名の由来になります。新しい格闘技を指導するにあたり、彼は数多くの武術指導や実演を行い、初心者向けにサンボの方法論を記した書籍も発行しました。 ワシリー・オシェプコフは、当時のヨーロッパ人としては非常に珍しく講道館で修業した柔道2段の保持者で、優秀なコーチであり、サンボのトレーニングのプログラムを考案した人物でもあります。彼は生涯にわたり、武道の関節技や作戦の比較検討や研究を行いました。最も有名な彼の子弟がアナトリー・ハルラムピエフです。 格闘技の指導者となったアナトリー・ハルラムピエフは師匠らの教えを受け継ぎ、サンボの発展に大きく貢献しました。彼の功績は、オシェプコフとスピリドノフのトレーニング理論を体系化したこと、さらにシベリアや中央アジア、コーカス地域の格闘家が持つ関節技を進化させ、サンボの格闘技としての質を高めたことです。また、彼は1938年に実施された最初のトレーニング・キャンプでコーチを務めました。

創世記のサンボ

サンボは各国の国技を取り入れ、真の国際的なスポーツ競技となりました。熱意ある格闘家たちが、異なる格闘技をサンボに導入するための作業を入念に行ったおかげで、唯一無二の自己防衛術としてのサンボが形成されたのです。
サンボは進化や発展に前向きです。創設初期の段階から、ロシアのコーチ陣は徹底的な教育を受けています。アスリートが完璧にサンボの技術を習得し、試合でポジティブに戦略を考えるスキルを身につけるための指導を行っています。

国際サンボ連盟(FIAS)

1920年代 陸軍と警官のための実践的な自己防衛術がロシアで生み出され、サンボと名付けられました。
1938年 サンボは公に認められ、ロシアの体育教育課程の一環に組み込まれました。
1939年 サンボの第1回ロシア選手権が催されました。
1950~60年 サンボは日本、モンゴル、ブルガリア、その他の国で国際的に認められました。
1966年 サンボは国際レスリング連盟(FILA)により新たな国際格闘技として認められました。
1972年 ラトビアのリガで第1回ヨーロッパ選手権が催されました。
1973年 イランのテヘランで第1回世界サンボ選手権が催されました。
1981年 スペインのマドリッドで第1回世界女子サンボ選手権が催されました。
1984年 FIASが設立しました。
1984年5月25日 スウェーデンのヨンショーピングで行われたオリンピック総会でFILAはサンボを独立した競技として認める決議を行いました。
1984年6月13日 スペインのマドリッドで最初のFIAS総会が開催され、56カ国の代表が集まりました。初代FIAS会長に任命されたのはスペイン人のフェルナンド・コンプテ氏です。
1984年9月14日 FIAS規約が制定されました。以降、すべての国際大会(世界シニア大会、世界ジュニア大会、ワールドカップ、大陸選手権、大陸トーナメントなど)はFIASの後援で行われています。
1985年 FIASはスポーツアコード(旧GAISF)の正会員に認定されました。
1985年 サンボはイギリスのロンドンで開催された第2回ワールドゲームズの競技種目として採用されました。
1993年 サンボはオランダのハーグで開催された第4回ワールドゲームズの競技種目として採用されました。
1996年 日本で世界サンボ選手権大会が開催されました。
2006年8月 FIASは世界アンチ・ドーピング機構(WADA)に加盟しました。
2007年11月 チェコのプラハで第31回世界サンボ選手権が催され、43カ国、332名の選手が大会に参加をしました。この大会はスポーツサンボとコンバットサンボが同時に開催された最初の世界選手権大会です。
2007年 FIASは国際スポーツ・フォア・オール協議会(TAFISA)に加盟し、韓国の釜山で開催されたTAFISAゲームズの競技種目として採用されました。
2009年11月 ギリシャのテッサロニキで開催された第20回FIAS総会でワシリー・シェスタコフがFIAS会長に任命されました。
2010年 FIASは北京で開催されたスポーツアコード・ワールドコンバットゲームズに参加しました。
2013年 国際大学スポーツ連盟(FISU)は、ロシアのカザンで開催される世界ユニバーシアード大会の競技種目にサンボを採用しました。
2014年 タイ・プーケットで開催された第4回アジアビーチゲームズでビーチサンボが実施されました。
2014年11月 日本で2度目の世界サンボ選手権大会が開催され、81カ国、434名の選手が大会に参加しました。
2015年 アゼルバイジャン・バクーで開催された第1回ヨーロッパ競技大会でサンボが実施されました。
2016年 ベトナム・ダナンで開催された第5回アジアビーチゲームズでビーチサンボが実施されました。
2017年 トルクメニスタン・アシガバットで開催された第5回アジアインドア&マーシャルアーツゲームズでサンボが実施されました。
2018年 インドネシア・ジャカルタで開催された第18回アジア競技大会でサンボが実施されました。 国際オリンピック委員会(IOC)は東京で開かれた理事会で、 FIASを3年間の期限付きで暫定承認しました。
2019年 ベラルーシ・ミンスクで開催される第2回ヨーロッパ競技大会でサンボが実施されました。
2019年 ベラルーシ・ミンスクで開催される第2回ヨーロッパ競技大会でサンボが実施されました。
2021年7月20日 国際オリンピック委員会(IOC)は東京で開かれた第138次総会で、 FIASを正式承認しました。
現在、サンボは世界5大陸、120カ国以上で発展し続けています。 FIASは毎年、スポーツサンボとコンバットサンボの世界大会や大陸大会をはじめ、その他の公式大会を、男女別、ジュニア、ユース、マスターのカテゴリーで実施しています。サンボの人気は世界中の若い世代に大きく広まっています。また、FIASは身体に障害がある選手の競技への参加を積極的に受け入れています。

現在のサンボ

カテゴリー
スポーツサンボ(男子・女子) コンバットサンボ(男子・女子) ビーチサンボ(男子・女子) 視覚障がい者のためのスポーツサンボ(男子・女子) デモサンボ
年齢区分
ヤングスター:11-12歳 スクールチルドレン:13-14歳 カデット:14-16歳 ユース:16-18歳 ジュニア:18-20歳 シニア:18歳以上 マスターズ:35-65歳、又はそれ以上
服装
【スポーツサンボ】 サンボジャケット(赤と青)、帯(赤と青)、ショーツ(赤と青)、サンボシューズ(赤と青) 【コンバットサンボ】 サンボジャケット(赤と青)、帯(赤と青)、ショーツ(赤と青)、サンボシューズ(赤と青)、ヘルメット(赤と青)、すね当て(赤と青)、グローブ、マウスピース、急所ガード 【ビーチサンボ】 ビーチサンボジャケット(白)、帯(赤と青)、ビーチサンボショーツ(赤と青)、アンクルサポーター(赤と青) 【視覚障がい者のためのスポーツサンボ】 サンボジャケット(赤と青)、帯(赤と青)、ショーツ(赤と青)、サンボシューズ(赤と青)、ヘルメット(赤と青)、アイマスク

生涯スポーツとしてのサンボ

・子ども、男性、女性のためのサンボ ・マスターズ、身体に障害がある人のためのサンボ ・警官のためのサンボ ・健康のためのサンボ
2007年以降、サンボはTAFISAが主催する大会の競技種目になっています。

サンボの未来

過去数十年におけるサンボの国際的な発展を見ても分かるとおり、サンボは将来性のある競技です。世界5大陸にまたがる選手たちが持つ技術のレベルは毎年高まっており、サポーターの数も増えています。心の強さと完璧な身体を兼ね備えたいと願う人々がサンボに引きつけられているのです。
FIASはサンボが国際的な格闘技となるよう大きく寄与している団体であり、近い将来の目標は、サンボをさらに国際的な競技として発展させることです。現在の主な活動としては、FIASが複数のスポーツ大会に参加すること、すべての国におけるオリンピック委員会から認定を受けること、各競技大会において観客を増やすこと、サンボに対するメディアの関心を高めること、アンチ・ドーピング機構が定める規定を遂行すること、人種や民族の垣根なく、サンボを普及させることです。