日本サンボ連盟

第33回世界サンボ選手権大会(シニア) 試合レポート
(於:ギリシャ・テサロニキ)

2009年11月6・7日

初日(11月6日)

【女子48キロ級:参加7名】
 八木沼志保選手が2年連続4回目の出場。1回戦の相手は世界10回優勝のモスクビナ(ベラルーシ)、4年前の初出場時に続いて2度目の対戦である。序盤の攻撃は凌いだものの、相手得意の巴投げ2回と抑え込みで0-12のテクニカル一本負け。モスクビナが48・52?級で入賞経験のある常連トリビッチ(セルビア)に準決勝で敗れ、八木沼選手は敗者復活に回れず。決勝は0-3と先行されたトリビッチが技に入ったところで腰を負傷し棄権、ロシアの新鋭ルベルが初栄冠。

1位 ルベル・ポリナ(ロシア)
2位 トリビッチ・タチアナ(セルビア)
3位 モスクビナ・タチアナ(ベラルーシ)
3位 キリロバ・ガブリエラ(ブルガリア)

【女子56キロ級:参加12名】
 日本は不参加。世界2位4回のラジェバ(ブルガリア)が本命かと思われたが2回戦でセルビアの若手モリッチに1-12と苦杯。その勢いで勝ち進んだモリッチが初優勝。

1位 モリッチ・ディヤナ(セルビア)
2位 ルズメトワ・ウギジョン(ウズベキスタン)
2位 ラジェバ・エリーツァ(ブルガリア)
3位 ゼンチェンコ・タチアナ(ロシア)

【女子64キロ級:参加7名】
 日本は不参加。07年優勝のレシュコワ(ベラルーシ)と昨年優勝のゴルベルグ(ロシア)が順当に勝ち上がり決勝で対戦。細かく加点したレシュコワが王座を奪回した。

1位 レシュコワ・アナスタシア(ベラルーシ)
2位 ゴルベルグ・エカテリーナ(ロシア)
3位 チェラル・アドリアーナ(ルーマニア)
3位 カラウシュ・バレンティーナ(モルドバ)

【女子72キロ級:参加8名】
 日本は不参加。世界4回優勝のガリャント(ロシア)が準決勝で敗退、決勝では新顔対決をラドゼビッチ(ベラルーシ)が制する。

1位 ラドゼビッチ・カツィアリナ(ベラルーシ)
2位 サベンコ・タチアナ(ウクライナ)
3位 ガリャント・スベトラーナ(ロシア)
3位 ジルキバエワ・アリヤ(カザフスタン)

【女子+80キロ級:参加8名】
 日本は不参加。ロディーナ(ロシア)が自分より体格に勝るダビドゥコ(ウクライナ)やバリシック(ベラルーシ)を抑えて10回目の優勝、48?級モスクビナの記録に並んだ。

1位 ロディーナ・イリーナ(ロシア)
2位 バリシック・ユリア(ベラルーシ)
3位 ソップ・アンジェルカ(エストニア)
3位 ダビドゥコ・オルガ(ウクライナ)

【男子52キロ級:参加11名】
 大石健二選手が初参加。1回戦の相手はアジアの新参国ヨルダンのマカイダ・ハシェム。実力差のある相手を背負い投げや肩車で攻め、最後は腕十字で一本。2回戦ではベテランのクルリポ・アンドレイ(ベラルーシ)と対戦。袖返し、タックル、抑え込みを食らい0-12でテクニカル一本負け。クルリポが準決勝で06年世界1位のチェレンツォフ(ロシア)に敗れたため敗者復活はなし。決勝戦はチェレンツォフと昨年優勝のバイバティロフ(カザフスタン)、チェレンツォフが序盤に足技で2ポイント選手するが、後半に守ってしまいパッシブが重なり3-2でバイバティロフが逆転、2連覇を達成した。

1位 バイバティロフ・エルボラット(カザフスタン)
2位 チェレンツォフ・デニス(ロシア)
3位 クザナシビリ・ウシャンギ(グルジア)
3位 ジュラエフ・シャフカット(ウズベキスタン)
 
【男子62キロ級:参加16名】
 00・02年世界2位、08年3位の松本秀彦選手が11年連続12度目の出場。1回戦の相手は昨年逆ブロックで3位だったムカノフ(カザフスタン)、序盤に肩車で2ポイントを失う。追う展開になるが焦ったところを足取り、掬い投げ、再び肩車と決められ0-15でテクニカル一本負け。追ったところを合わせられるという悪いパターンにはまった試合だった。ムカノフが準決勝で今年欧州2位の新鋭ボリソフ(ブルガリア)に僅差で敗れて敗者復活に回れず。決勝では03年57?級世界2位のパニュコフ(ロシア)がボリソフに足関節を決めて世界初優勝。

1位 パニュコフ・アレクサンダル(ロシア)
2位 ボリソフ・ボリス(ブルガリア)
3位 セドイ・イーゴル(ベラルーシ)
3位 ムカノフ・アザマット(カザフスタン)

【男子74キロ級:参加25名】
日本は不参加。世界6回優勝のサビノフ(ウクライナ)が順当に勝ち上がり、決勝で03年62?級世界1位のムヒン(ロシア)と対戦。互角の展開で中盤まで進むが攻め手の多いサビノフがパッシブ1-0でリード。しかしムヒンが変型の肩車を決め1-1へ。内容差で負けているサビノフはアクティブでの再逆転を狙うがムヒンが必死に耐えてそのまま終了。1階級間を飛ばしての2階級制覇という珍しい記録を達成(68?級では05年欧州1位になっている)。

1位 ムヒン・デニス(ロシア)
2位 サビノフ・ビクトル(ウクライナ)
3位 アリケイ・アスルベック(カザフスタン)
3位 ダニエリャン・アショット(アルメニア)

【男子90キロ級:参加17名】
 菊地嘉幸選手が初参加。1回戦はシード、2回戦で06年世界1位のボダベリ(グルジア)と対戦。開始早々足取りで2ポイント奪いリードするが、帯取返しの体勢からスープレックス状に真後ろに持って行かれ4ポイント献上。後半でもう一度同じ技に入られ、今度は小内掛けで防ごうとするがそのまま反られて4ポイント。お互いにパッシブが入り3-9で試合終了。ボダベリが決勝に上がったので敗者復活戦へ。ここでは06年82?級世界2位のバシルチュック(ウクライナ)と対戦。立ち技では優位に進め、寝技でもバックについたところから横崩しで攻めるが逆転の膝十字固めをもらって一本負けに終わった。07・08年優勝のカズショナック(ベラルーシ)は初戦で06・07年2位のチェルノスクロフ(ロシア)に一昨年決勝のリベンジを許し3位止まり。決勝は序盤の1ポイントを守り切ったチェルノスクロフが悲願の初優勝。

1位 チェルノスクロフ・アルシム(ロシア)
2位 ボダベリ・ミンディア(グルジア)
3位 カズショナック・アンドレイ(ベラルーシ)
3位 バシルチュック・イワン(ウクライナ)

【男子+100キロ級:参加13名】
 豊田虎徹選手が初参加。1回戦で世界3回優勝、柔道でも活躍するリバク(ベラルーシ)と対戦。得意の隅返しの組手に入られ、距離を取って防ごうとするも腕をロックしての捨て身技に変化されて4ポイント。固めた腕をそのまま腕絡みで決められ、これも方向をずらしに行ったがそのまま伸ばされてアームバーのような状態で一本。リバクが決勝に進み敗者復活戦に回る。アフマトフ・ノディル(ウズベキスタン)と対戦、パッシブで1-0と先行して優位に試合を展開し、終盤にバテた相手を抑え込み、そこから腕絡みで一本勝ち。3位決定戦はカストロ(ベネズエラ)と対戦。序盤にアクティブを取られ、後半に攻めて相手にコーションが入るが170kgの巨漢を攻めあぐねてそのまま終了、0-0だがアクティブのある相手に軍配が上がりメダルを逃した。決勝は昨年と同じ顔合わせになり、序盤からミナコフが豪快な掬い投げなどでリード、後半にリバクが反撃するがミナコフが逃げ切って2連覇。

1位 ミナコフ・ビタリー(ロシア)
2位 リバク・ユーリー(ベラルーシ)
3位 イリエフ・イワン(ブルガリア)
3位 カストロ・ジュアン(ベネズエラ)

2日目(11月7日)

【女子52キロ級:参加4名】
日本は不参加。常連の出場が少なかったこの階級、アリエワ(ロシア)が決勝で足関節を決めて初制覇。

1位 アリエワ・ディアナ(ロシア)
2位 ラゾリワ・オルガ(ウクライナ)
3位 バツォバ・ゲルガナ(ブルガリア) 
3位 ルナール・ディスナ(ベネズエラ)

【女子60キロ級:参加9名】
日本は不参加。昨年優勝のヤンチェバ(ブルガリア)と2位のロペス(ベネズエラ)がともに欠場。昨年3位のプロコペンコ(ベラルーシ)が決勝ではコステンコ(ロシア)にアクティブ1個のリードを許すが試合終了間際に足取りから大内刈りで2ポイントを奪い逆転、初優勝を決めた。

1位 プロコペンコ・カツィアリナ(ベラルーシ)
2位 コステンコ・ヤナ(ロシア)
3位 イリエバ・イベリナ(ブルガリア)
3位 レピダ・アンナ(モルドバ)

【女子68キロ級:参加7名】
 日本は不参加。昨年優勝のプキテ(ラトビア)は欠場、07年優勝のウスルツォワ(ロシア)が2年ぶりの頂点。

1位 ウソルツェワ・オルガ(ロシア)
2位 タイジャノワ・カルジャン(カザフスタン)
3位 デリバシッチ・スネジャナ(セルビア)
3位 ダビドワ・マリアナ(モルドバ)

【女子80キロ級:参加6名】
 日本は不参加。決勝は昨年と同じ対戦になり06・08年優勝のオリャシュコバ(ブルガリア)が2年連続3度目の優勝。

1位 オリャシュコバ・マリア(ブルガリア)
2位 スボティナ・アンナ(ロシア)
3位 マンディッチ・バニャ(セルビア)
3位 マトロソワ・アナスタシア(ウクライナ)

【男子57キロ級:参加17名】
 伊藤要選手が初参加。1回戦はシード、2回戦で06年世界3位のチンチャラーゼ・アブタンディル(グルジア)と対戦。序盤は粘りを見せるが、自ら寝技に引き込む展開が多くパッシブで0-1。さらにアクティブ2回を取られ、終盤には4ポイントの投げももらって0-5で敗退。チンチャラーゼが準決勝で敗れて敗者復活には回れず。決勝は06年52?級世界2位のガシモフ(アゼルバイジャン)をジャイナコフ(カザフスタン)が僅差で下し、カザフスタンが軽量2階級を制した。昨年優勝のマシュコビッチ(ベラルーシ)はジャイナコフに敗れて3位に終わる。

1位 ジャイナコフ・ダウレン(カザフスタン)
2位 ガシモフ・イスラム(アゼルバイジャン) 
3位 トゥラクロフ・ラフシャン(ウズベキスタン)
3位 マシュコビッチ・アントン(ベラルーシ)

【男子68キロ級:参加20名】
 大原裕樹選手が初参加(エスポワールでは07年に出場)。1回戦の相手はカザフスタンの若手サンセルビン。アクティブ2個先行された後、寝技の展開でアキレス腱固めを決められ敗退。サンセルビンは世界4回優勝のバジレフ(ベラルーシ)らを破り決勝に進出、大原選手は敗者復活戦へ。1回戦でビンコ・ロディティ(スイス)と対戦。河津掛け、掬い投げ、抑え込みと決めて難なくテクニカル一本。2回戦の相手は前記のバジレフ、序盤に得意の捨て身技で4ポイントを取られ、巻き投げと抑え込みで加点された後に腕十字を決められ敗退。バジレフは3位決定戦で柔道アジア大会3位のキム(韓国)に敗れて5位。逆ブロックは05年世界1位のハシュバータル(モンゴル)が決勝へ。今年の世界柔道でも優勝している彼が安定感を見せつけ2度目の優勝、同一年にサンボと柔道の世界選手権で優勝という快挙を達成した。

1位 ハシュバータル・ツァガンバータル(モンゴル)
2位 サンセルビン・アルマン(カザフスタン)
3位 キム・クワンスブ(韓国)
3位 ショポフ・ステファン(ブルガリア)

【男子82キロ級:参加18名】
 小野瀬拓見選手が初参加。1回戦で今年欧州2位のバラバン(ウクライナ)と対戦、序盤に豪快な肩車を食らい4ポイント。波に乗る相手の勢いを止められず巻き投げ、抑え込み、足取りともらってしまい0-12でテクニカル一本負け。バラバンが準決勝で02年世界1位のハリトーノフ(ロシア)にアキレスを決められて敗退、小野瀬選手の敗者復活はなし。ハリトーノフは決勝でも06年3位のクツィア(グルジア)にアキレスを決めて7年ぶり2度目の優勝。

1位 ハリトーノフ・アレクセイ(ロシア)
2位 クツィア・ニコ(グルジア)
3位 アブドゥルガニロフ・マゴメット(ベラルーシ)
3位 バラバン・セルゲイ(ウクライナ)

【男子100キロ級:参加17名】
 田矢信二選手が2年連続3度目の参加。1回戦はシード、2回戦で07年世界1位のパブリアシビリ(グルジア)と対戦。長身の相手に上から持たれて払い腰と抑え込みで0-8、その後もパッシブと裏投げなどを受けて0-14でテクニカル一本負け。パブリアシビリが準々決勝で04・08年世界1位のイサエフ(ロシア)に腕十字で敗れたため敗者復活戦には回れず。決勝は昨年3位のホラカシェフ(タジキスタン)がイサエフを相手に立ち技で優位に展開するが、寝技で抑え込まれてしまい判定負け。イサエフが3度目の優勝を飾る。
 
1位 イサエフ・エブゲニー(ロシア)
2位 ホラカシェフ・ナビムハマット(タジキスタン)
3位 シオマチュキン・ヤウヘン(ベラルーシ)
3位 パブリアシビリ・ミリアン(グルジア)

【団体順位】
男子/ 1位 ロシア  2位 カザフスタン  3位 ベラルーシ  
女子/ 1位 ロシア  2位 ベラルーシ   3位 セルビア

【参加国】
イェメン、アルメニア、アゼルバイジャン、ベラルーシ、ベルギー、ブルガリア、パナマ、シリア、チェコ、エストニア、フランス、ドイツ、英国、アイルランド、ギリシャ、イタリア、日本、カザフスタン、キルギスタン、モーリシャス、ラトビア、リトアニア、レバノン、マレーシア、モルドバ、モンゴル、モロッコ、グルジア、ルーマニア、ロシア、セルビア、スロベニア、ヨルダン、スイス、シンガポール、インドネシア、イラン、韓国、スペイン、タジキスタン、タイ、ウクライナ、米国、ウズベキスタン、ベネズエラ、フィリピン (役員のみ)スロバキア、キプロス、フィンランド                   
以上46ヶ国

【参加選手数】
男子154名、女子68名  計222名

<総評>

 4年前の世界エスポワール・ジュニアに参加した時点で分かっていたことだが、ギリシャの運営能力は高いとは言えず、今回も不安を抱えての遠征であった。予想通り諸々のトラブルがあった。宿舎が数ヶ所に分かれており、ID作成のためにタクシーで移動を強いられたり、計量が行われるホテルに体重計が用意されていなかったりとかなり振り回された。また、大会期間中の昼食は宿舎に戻らずに軽食が支給されるのみで不十分なレベルのものだった。加えて日本選手団は不運なことに受託荷物(スーツケース)が経由地のローマで積み残しされて到着が遅れ、試合直前のコンディショニングに支障をきたした。本来は次の便(半日後)で着くはずがその便でも13個中4個しか届かず、残り9個は丸1日後まで待たされるいう状況で、航空会社の対応にも疑問が残った。
 大会参加人数は昨年より若干少なかったが、レベルは高かった。松本選手はまさかの初戦テクニカル一本負けであったが、展開の綾もあり仕方なかった。点差ほどの実力差はないだろうし、今回の入賞者たちと勝負できる力はあると思う。是非万全の状態でまた挑戦してもらいたい。柔道で経験・実績十分の菊地商店勢(小野瀬・菊地・豊田各選手)が3人揃って参加し期待されたが、今回は「サンボの洗礼を浴びた」と言えよう。しかし世界トップレベルの選手の力を肌で感じることがたので、その差を埋めるべく努力・研究をしていけば上位に食い込んでくる可能性は十分にあるだろう。その他の選手たちもそれぞれの課題が見えたはずなので次回に向けて頑張ってほしい。
 各国の選手の中では、モンゴルのハシュバータル選手の活躍が光った。決勝では先行されたが全く慌てることなくチャンスを見逃さずに逆転しており、勝負強さを見せた。本文にも書いたが柔道の世界選手権の2ヶ月後にサンボの世界選手権に参加しダブル優勝は偉業である。柔道のルール変更(足取り系の技の禁止)でサンボとの住み分けがされてくるかもしれないが、今後も参加してほしい逸材である。その他の試合では、昨年に続いてロシア寄りの判定が多く見られた。特に90kg級・100kg級の決勝はロシアにパッシブがなかなか入らず場内ブーイングの嵐であった。男子6階級・女子4階級を制したロシア、その選手層の厚さやレベルの高さは確かであるが、不公平な形で独り勝ちを続けるのは競技発展のためにはならないと思う。
 大会期間中にFIAS会議と役員改選が行われ、1期4年会長を務めたルードマン・ダビド氏(米国)が勇退、シェスタコフ・ワシリー氏(ロシア)が新会長に選出された。ルードマン氏は第1副会長に就任、また元会長のコンテ・フェルナルド氏(スペイン)は名誉会長に推戴された。 
[文責:筒井 穣]

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